
みなさんは、「宝くじがひきこもり脱出に役立つ」と言われて、どうお考えになるでしょうか。
当時のわたしは、15年モノのひきこもりでしたが、ある日偶然、親が買ってきた連番宝くじをきっかけに「外の社会」に目を向けるようになりました。
これは宝くじをきっかけに、わたしが「外に出たい」、「お金が欲しい!」、「会話をしたい!」など、様々な欲求を持つようになったからです。わたしは、ひきこもりの当事者にとって宝くじが、大きな可能性であることに気付きました。
そこで今回は、わたしがひきこもり期間中に経験した、「宝くじ」にまつわるエピソードをご紹介しようと思います。
宝くじの「ワクワク感」はひきこもりの特効薬
宝くじを買った人は、誰しも1度は「1等が当たったらどうしよう…(ドキドキ)」と妄想します。
これがないと宝くじの楽しさはありません。宝くじは落ち込んだ時や、退屈な時に目を向けて、「ワクワク感」を楽しむモノです。
実はこの「ワクワク感」こそ、ひきこもりの特効薬として役立ちます。
ひきこもり生活には、ほとんど刺激がありません。未来に希望を持てずにいるので、普段からだいたいネガティブです。
もちろん、当時のわたしもそうでした。「自殺しようかな…」、「どうせ結婚もできやしない…」と悩み続ける日々だったのを、今でも強く覚えています。
ですが宝くじを手にしてからは、そんなネガティブモードの意識が、少しだけ変わりました。買った瞬間、魔法のように変わるものではありませんが、普段ならネガティブ思考におちいるとき、10回に1度くらいは「1等が当たったら、どうしようかなぁ~」とワクワクするようになったのです。
この段階では、状況は何も変わっていません。社会復帰したいとも思いません。しかし、つまらないで染まっていたわたしの生活が、確実に変化したのを覚えています。

「またやりたい!」が外への切符に
宝くじは、ひきこもりさんの「外出したい!」を強めます。
わたしがこのように考えるようになったのは、最初に買ったくじがハズれたときです。
連番なので100円だけ当たりましたが、当然満足はできません。刺激がなく退屈な生活を過ごしているせいか、何かあるたびに宝くじを思い出し、「どうせなら3万円くらい当たって欲しいなぁ」→「もう1回やってみようかな」と考えるようになったのです。
はい、いきます。ひきこもり生活は普通の生活と比べて、刺激や変化が圧倒的に足りません。だから1度覚えた刺激を、忘れることができません。
当時のわたしは、親と一緒でなければ外に1歩も出られない輩でしたが、やはり宝くじの刺激を忘れられず、
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- どうしよう…欲しいなぁ…
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- でも…近所の人に見られたらどうしよう
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- ああ…でも、やっぱり欲しい!
と、日々考え続けていたのを覚えています。
わたしの変化は、よほど露骨だったのでしょう。うちの親はわたしが宝くじを欲しがっていると気付いたのか、「宝くじを買いに行こう?」と連れ出してくれました。
いやぁ、周囲のサポートは有難いものです。
ともかくわたしは、この段階で外出への意欲を持ちました。
「外になんか絶対でない!」と思っていたわたしが、宝くじをきっかけに、いつの間にか「宝くじボックスへ行きたい」と欲するようになったのです。

宝くじボックスはコミュニティ!顔を覚えてもらえる楽しさ
宝くじを買い始めてから数か月。わたしはいつの間にか、宝くじ売り場の顔なじみになっていました。
最初に気付いたのは、宝くじボックスのお姉さんが「いつもありがとうございます。今日はどれを購入しますか?」と声をかけてくれた時です。
スーパーの前の小さなボックスなので、すぐに覚えてしまうのでしょう。最初に言われたときは驚きましたが、「顔を覚えてもらえる」ことに不思議な楽しさも感じました。
それからさらに数か月。今度は、お客さんとの会話を経験しました。
どの宝くじを買おうか迷っている時に「ミニジャンボがオススメよ」と、おばあさんに声をかけてもらったのです。開催くじの商品リストを眺めるわたしに、興味を持ったのでしょう。
わたしたちはしばらく、宝くじのイラストデザインや、当選したら欲しいものなど、会話に話を咲かせました。手の空いた店員さんも話に加わり、楽しい時間を過ごしたのを覚えています。
わたしがひきこもりになったのは、「社会との繋がり」を負担に感じたからです。職場での経験がそのままトラウマと化してしまい、落ちぶれた自分の姿を人に見せるのを恐れていました。一時は両親との会話すら、苦痛でたまらなかったほどです。
ですが、宝くじにハマってからのわたしは、どうでしょう。外出して他人と会話するくらいもう平気。親との会話も抵抗なくできるようになり、「前に進みたい」と本音で話すことができるようになったのです。これはわたしにとって、間違いなく大きな前進でした。

たったの100円でチャレンジできる!
宝くじは、インフレが進む現在も、たった100円からチャレンジできる遊びです。
ひきこもりはあまりお金がありませんから、この価格設定はとても嬉しい。連番で購入しても1,000円程度で、1枚は当たりますから、実質900円ほどで楽しめます。
また抽選期間もだいたい2週間~3週間程度と、それほど急なペースではありません。毎回連番購入したと仮定しても、年間2万円~3万円の範囲です。
わたしは約9か月ほど購入し続けましたが、最後の方はほとんど抵抗を感じることなく、外出できるようになりました。
継続は力なりと言いますが、本当に前進したと思います。(ちなみに、宝くじが3,000円以上当たることはありませんでした)

「お金が欲しい」が自立のきっかけ
わたしは宝くじを買うまで、「お金が欲しい」と考えていませんでした。
お金がないと生きていけないコトはわかっています。ですが過去のトラウマや病気などが邪魔をして、「つらい経験をしてまで、お金は欲しくない」と考えていたのです。
宝くじは、そんなわたしの「お金が欲しい」を呼び起こすきっかけとなりました。自宅で宝くじを眺めるうちに、お金を強く欲している自分に気付いたのです。
言うまでもありませんが、宝くじの当選確率は極めて低いです。だからお金を稼ぐという目的で、宝くじを購入するのは不合理と言うしかありません。
わたしは次第に、「自分でお金を稼ぐコト」に意識を向けるようになりました。過去のトラウマとのバランスを考えて、クラウドソーシングやネットビジネスなど、自分なりに稼ぐ方法を模索するようになったのです。

まとめ
宝くじは、ひきこもりさんの意識改革にピッタリの娯楽です。
宝くじが持つ「ワクワク感」は、わたしたちの空虚でネガティブな思考を薄めるばかりか、日々の生活に適度な刺激を与えます。
また宝くじは購買までの過程において、売り場ボックスへの外出や、販売日程や当選番号の情報収集が必要です。途中で親子間のコミュニケーションが生まれる機会も多いので、ひきこもりさんが外に目を向ける良いきっかけになるでしょう。
もちろん宝くじは当選確率が低いので、お金を稼ぐ目的には向きません。しかし宝くじは、購買~抽選~再購入へと至る過程で、わたしたちひきこもり経験者に得難いものを与えてくれます。