
内閣官房は2019年7月31日、就職氷河期支援を目的とした「就職氷河期世代支援推進室」を立ち上げました。
既に報道メディアで大々的に取り上げられていますが、具体的にどんな働きや役割を担うのか、「イマイチわからない…」という方も多いのではないでしょうか。
そこで当サイトは、内閣官房に問い合わせを実施。支援推進室の役割や目的、就職氷河期世代支援プログラムとの兼ね合いも含め、できるだけわかりやすく解説を進めます。
就職氷河期世代支援推進室とは?
就職氷河期世代支援推進室とは、バブル崩壊後の採用難に苦しんだ氷河期世代支援のために、厚労省や文科省など9つの関係省庁が集まった省庁横断型の支援組織です。
各省庁と取りまとめる内閣官房が管轄し、2019年6月に発表された就職氷河期世代支援プログラムの速やかな実施を進めるなどが目的。
およそ100万人と見られる不本意な状態にある就職氷河期世代のための具体的な支援策として、下記のような活動を実施していくと明かしています。
職業訓練や資格取得など支援に必要な予算の確保
NPO組織を含めた、引きこもり当事者への接触 etc...
地方窓口との連携協力によるニーズの把握
氷河期世代を適切に支援するには、「どんな支援が望まれるのか?」といったニーズの把握が必要です。
内閣官房によると、支援推進室は今後、ニーズのある支援の把握に努めるとのこと。
当事者や家族らと直接接触する地方自治体担当課や引きこもり支援の窓口と連携し、求められている支援の精査に入るとの考えを示しています。
職業訓練や資格取得など支援に必要な予算の確保
就職氷河期世代支援プログラムの実施には、多くの費用が必要と予測されます。
就職氷河期世代で不本意な状態にある人は、引きこもりを含め100万人とも見られているので、形式的な支援だけでは焼け石に水状態だからです。そこで支援推進室は今後、2019年8月~9月に実施される財務省の概算予算請求にて、「支援のために必要なお金を出してください!」とお願いする考え。
支援のための予算をしっかりと確保してから、氷河期世代のキャリア形成や社会復帰に役立つ支援内容を決めていくとしています。
現段階では具体的な支援内容まで定まっているとは言えませんが、現在のところ考えられるものとして、
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- 氷河期を採用した企業への助成金の増額
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- 不足するキャリアを補強するための職業訓練
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- 資格取得や学びなおし(リカレント)に必要な補助金
などが検討予定になる見通しです。
NPO組織を含めた、引きこもり当事者への接触
氷河期世代の方のなかには、引きこもって社会と隔絶していたり、忙しくてなかなか情報収集できない方もいます。
どんな素晴らしい支援内容でも、支援を必要とする人に情報を届けることができなければ、これまでの支援と同じ結果になるでしょう。
そこで支援推進室は、こうした声の届きにくい人たちに対しても、当事者と関わる機会の多いNPOと連携するなどして、積極的に情報を届けていくなどの考えも示しています。
民間団体は自治体がリーチできなかった層とも繋がりが持っているので、上手く機能すればより多くのひとに支援の手が届きそうです。
誤解されがちなポイント
最後に、支援推進室および就職氷河期世代の支援策について、誤解されがちなポイントについて解説します。
支援プログラムは準備ができたものから開始する
「支援プログラムはいつからスタートするのか?」といった質問が多いのですが、就職氷河期支援プログラム自体は、既に支援推進室の設置を待たずにスタートしています。
と言いますのも、就職氷河期支援プログラムは、専用の就職支援窓口や職業訓練に対する支援など様々なものをセットにしたものですが、
「よーいドン」的に一斉にスタートするものではなく、各支援策ごとに準備ができたものから随時スタートするもの
だからです。
実際、ハローワーク梅田や阿倍野などでは既に、氷河期世代を対象にした専用窓口が設置されています。
本格的な氷河期支援はいつからなのか?
順調にいっても、おそらく2020年4月以降になるものと見られています。
対策推進室は今後、2019年8月~9月に施策に必要な予算を請求する考えです。しかし実際に予算が交付されるのは早くても2020年4月になるため、それまではお金のかかる支援などは(一般的な見解では)難しいものと思われます。
もっとも、対策推進室は費用のかからない支援は、速やかに実施する考えです。
当サイトが内閣官房に質問したところ、例えば地方自治体の相談窓口との連携による「支援内容のニーズの把握」などは、費用がかからないアクションとの認識を示しました。
氷河期支援は3年に限らない
内閣官房が明かしたところによると、「氷河期の支援は期限を設けず、個人の状況に応じて継続的に支援を続ける」としています。
よくあるウワサのひとつに、「氷河期世代の支援は3年間に限られる」としたものがありますが、これは「今後3年間で、不本意な状態のひとを30万人ほど正規雇用化する」という集中支援目標を誤って解釈したものと考えられます。
分かりやすくまとめるなら、「3年間の目標は30万人の雇用だが、支援そのものは期限を設けずに継続する」ということです。
まとめ
就職氷河期世代支援推進室は、就職氷河期支援プログラムの速やかな実施のために設置が決まった組織です。
同推進室は今後、これまで発表されてきた支援実施のため、
引きこもり当事者や家族が必要とする支援の把握
施策実施のために必要な予算請求
など、実態的な「動力源の確保」に努めるものと見られています。