
画像fa-angle-double-right平成30年度 ひきこもりに関する実態調査結果(概要版)/香川県
香川県のひきこもり実態調査のうち、ひきこもりになってしまった「きっかけ」を年代別に整理しました。
わたしたちは「ひきこもり」を一括りに語りますが、例えば10代と40代では理由も背景も全く違うと言われています。ですが「どのように違うのか?」と問われますと、答えに窮する部分もありますよね。
香川県がひきこもりになった「きっかけ」を年代別に整理した情報を出しましたので、調査結果をベースに各世代の違いを探ってみましょう。
10代のきっかけは「不登校」
~19才のきっかけ上位は、下記の通りです。
- 小学校時の不登校
- 中学校時の不登校
- 高校時の不登校
- 人間関係がうまくいかなかった
- 病気(重篤なものを除く)
(注:わからない・無回答・その他は除く)
10代は大半を学生として過ごすため、不登校が上位を占めています。
実態調査では、不登校の理由までは明かされていません。しかし別の文科省調査では、不登校の原因を上位から、「学業不振」や「イジメ以外の人間関係トラブル」、「進級時などの不適応」としています(高校生)。
参考fa-angle-double-right平成28年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」結果について
大切なのは、不登校の原因に、いずれも人間関係的な要素が含まれている可能性があるというコト。例えば、学業不振は人間関係と無関係のように見えますが、授業についていけないという悩みは、当人が周囲の学生に対して疎外感を感じる一因です。

20代のきっかけは「人間関係」
20代のきっかけ上位は、下記の通りです。
- 人間関係がうまくいかなかった
- 職場になじめなかった
- 中学校時の不登校
- 就職活動がうまくいかなかった
- 高校生時の不登校
(注:わからない・無回答・その他は除く)
20代は多くの人が、社会進出を果たす年齢です。
ひきこもったきっかけも10代と比べて様変わりし、20代は人間関係がうまくいかない、職場になじめない、就職活動がうまくいかないなどの理由が目立ちます。また中学校をメインに不登校経験が、後を引いているケースも多いようです。
ただし根本的な部分は、10代と比べてあまり大きな違いはありません。
例えば2位の「職場になじめない」の背景には、働き方や社内ルールに対する上司や同僚との対立など、結局のところ人間関係に通じる部分が多々あるものと考えられます。

30代~40代のきっかけは「人間関係」
氷河期世代を含む30代~40代ののきっかけ上位は、下記の通りです。
- 人間関係がうまくいかなかった
- 職場になじめなかった
- 中学校時の不登校
- 就職活動がうまくいかなかった
- 病気(重篤なものを除く)
30代~40代は、就職氷河期世代を含む年代です。
意外なコトに、「就職活動がうまくいかなかった」としたケースは4位どまり。20代の回答とほとんど違いはありません。また上位ベスト3は人間関係・職場トラブル・中学校の不登校と続いており、きっかけそのものは20代ほとんど変わらない、という実態が明らかになりました。
唯一の相違点は5位に入った「病気」のみ。人間は年齢を重ねるほどに、体力・気力の両面が衰えます。病気をきっかけとした、ひきこもりは、50代・60代でも顕著であり「氷河期問題の未来」を物語っているかのようなデータです。

データからわかる3つのコト
上記データは香川県内のものですが、多くのポイントを示しています。とくに下記3点は、注意すべき項目です。
- 中学校は要注意
- 幸せが感じられない職場環境
- 結局のところ「人間力」の問題か
中学校は要注意
中学校不登校は、10代~40代のいずれも5位以内にランクインしている事象です。
学校生活は他に小学校、高校、大学などがありますが、多感な思春期世代を過ごす中学生活での経験は、当事者さんに多大な影響を及ぼすとわかります。
既に過ぎ去ってしまった人はどうするコトもできませんが、現在中学生だったり、これから中学校に上がるお子さんがいるご家庭は、学校生活に目を向けてあげると、ひきこもり予防に繋がるかもしれません。

幸せが感じられない職場環境
「就職活動がうまくいかなかった」は、10代以外のどの世代でもランクインしている事象です。
いっぽうで20代~40代の世代間で大きな変化は乏しく、
- 20代(10%)
- 30代(9%)
- 40代(8%)
とほぼ横ばい。意外なコトに氷河期世代よりも20代の方が、就職失敗を実感しているとの結果が出ています。
ただしこれは、「実は氷河期は、大したことがなかった」という話ではありません。日本が段々と貧しくなり、就職失敗を実感させるような労働環境が増えている事象と読み取れます。
結局のところ「人間力」の問題か
人間関係に関する悩みは、全労働世代に共通して上位に位置するきっかけです。
2位の理由である「職場になじめない」も、職場への不満が人間関係の破綻へとつながったと思われるケースが非常に多く、「人間関係とひきこもりは切っても切れない関係」にある断言できます。
そして、この分析結果は氷河期世代問題の解決の難しさを、極めてリアルに語っています。
日本はご存知の通り、年功序列&新卒至上主義社会です。
つまり社会全体が、「おじさんは教える側で、教えられる側ではない」という認識を持っています。そしてまた、おじさん側も「教える自分は偉いんだ」と自己肯定感を持って過ごしています。
ところが、氷河期世代のひきこもりには、教えられるための若さも、教えるだけの地位もありません。社会復帰を果たしても、結局のところマイノリティ的な存在である点に変わりはなく、環境圧力に対して負けないだけの「人間力」が必要という話です。
まとめ
香川県の実態調査をベースにして、明確なきっかけを年代別に解説しました。
20代~40代のいずれも「人間関係」が上位に食い込んでいるところは特徴的です。不登校がトップにきた~19才は例外ですが、不登校の理由には少なからず「人間関係」が含まれていると考えられるため、結局のところ全世代において人間関係の解決こそ、ひきこもり問題の解決の糸口と言えるでしょう。
もっとも、円滑な人間関係の構築は、年齢が上がるにつれ難しくなります。
と言いますのも、日本の労働社会は年功序列が根強いせいか、多くの企業で「おじさんは教えられる存在」ではありません。つまり氷河期世代のひきこもりから脱出するには、ただ働けば良いというものではなく、同世代の上司や年下の先輩を横目にして、「劣った存在である自分を感じながら」働かないといけないからです。
参考fa-angle-double-right平成30年度 ひきこもりに関する実態調査結果(概要版)/香川県