「謝らせたかった」母親の治療方針巡り60代無職男性が医師を銃撃

埼玉県ふじみ野市で2022年1月27日、母親の葬儀会場に訪れた40代男性医師を殺害した疑いで、60代の無職・渡辺宏容疑者が逮捕されました。

渡辺容疑者は1人で母親を在宅介護しており、訪問診療を行う医療関係者らと母親の治療方針を巡ってトラブルがあったとのこと。葬儀当日、医療関係者らが会場を訪れたところ、渡辺容疑者が猟銃を発砲し、医師を人質に立てこもりました。

通報を受けた警察らは渡辺容疑者を約10時間にわたり説得したのちに突入し、医師の解放に成功します。渡辺容疑者は殺人未遂容疑の疑いで逮捕されましたが、医師は腹部に傷を負っており、28日午前8時48分に死亡しました。

母親に強く依存する人格

本事件の注目点はやはり逮捕された渡辺容疑者の犯行動機です。

逮捕された渡辺容疑者は警察に対し「医師に謝らせたかった」と供述しています。渡辺容疑者は訪問診療を行う医師らと入院への切り替えなどの治療方針を巡ってトラブルがあり、これが犯行動機につながったものと見られます。

しかし、情報によると渡辺容疑者は以前母親が通院していた医療機関ともトラブルを起こしていたことがわかっています。同院においては母親の診療順などを巡ってトラブルが起きていたとのこと。母親に強く依存していた、渡辺容疑者の人格が浮かびます。

解決難しい9060

記事発表時点で渡辺容疑者は60代であるのに対して死亡した母親は90代であることから、事件は高齢親子が社会的隔絶から共倒れに至る9060問題の一類型と見られています。

しかし、渡辺容疑者は一人で母親を在宅介護しており、近隣には「母親の体調が悪く近所付き合いが難しい」と漏らしていたとのこと。9060問題は社会的隔絶が引き金になる問題ですが、渡辺容疑者の場合は周囲との社会的関係を自ら断つ判断に出ており、周囲の支援が難しい状況にあったことは疑いようがありません。

もっとも、9060問題はこれを以って解決不可能とすべき問題ではありません。本事件においても最終的には自ら社会的隔絶を望むに至っていますが、背景には容疑者当人の人格や社会的関係性への考え方にとどまらない、多大なネガティブ経験や体験が影響しているものと見られます。こうした兆候を容疑者を知る者や家族が迅速に察知し、適切な支援窓口に繋げることで、事件化を抑止すべきものと見られます。

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