
画像fa-angle-double-rightハローワーク神戸
雇用機会に恵まれないひとを対象にした「就職氷河期世代専用相談窓口」に、対象世代から1か月で50名あまりの相談があったと2019年10月2日、ハローワーク神戸が明らかにした。
市の担当者に成果を尋ねたところ、「既に何人かは就職先が決まりました」と語る。
相談者は非正規雇用や長期無業状態のひとが大部分を占めており、多くが自身の現状に課題や悩みを抱えている。専用窓口では相談者ごとに違うバックボーンを把握して、就労だけでなく、職業訓練や支援セミナーなども提供する方針だ。
実際の業務では「相談を第一」に積極対応を進めている。話を聞くだけからスタートして、就職に至った求職者も出ているようだ。
事務職人気は昔と変わらず。人手不足業界では「経験」が課題に
問題はやはり、求職者と起業側のニーズの差だ。
日本では、介護や建設・ITなどいわゆる人手不足業界の求人が増えている。ところが、ハローワーク神戸の担当者は「(氷河期世代の)求職者の多くは、業界よりも職種を重視する。なかでも事務職の人気が強い」と語る。
人手不足業界を忌避する理由は、人により異なる。だが、これらの業界の多くは過去「求人票と違う働き方や待遇」などが蔓延しており、求職者として警戒する気持ちは当然だろう。
また、近年ニーズが高まるIT業界については、経験の問題も指摘される。
IT関連は求人数こそあるものの、担当者は「30代以降となると、経験者を前提とした求人が大多数を占めている」と語る。つまり、企業は若手人材のみを求めており、実質的に対象世代の機会が奪われてしまっているのである。
これは別の視点からは見ると、公共職業訓練など外部で習得できる技術レベルが民間企業の求める水準に達していないとも言えるのだが、いずれにせよ「30代以降の人材を育てていこう」といった企業が皆無というのが、民間IT企業の実情だ。
人材の再評価を起こせるか?
実は上記の問題は、人手不足業界やIT企業に限った話ではない。
実際の求人を見てみると、管理職候補や出世コースを想定したと思われる雇用の多くは20代にばかり割り振られ、30代や40代以降は即戦力やアルバイト同様の作業職などが中心だ。しかし、氷河期世代の目的は「とりあえず就職すること」でなく、「自身が将来にわたって自立できる仕事」である。
つまり、彼らは今後、経済的に自立し、結婚や老後に耐えうる生活基盤を欲している。
政府は大規模な支援を計画するが、これを成功に導くには、良質な雇用創出に注力すべきだ。アルバイト同然の仕事を量産しても、氷河期世代は全く関心を示さないだろう。
また、この支援計画で成功するには、氷河期世代側の努力も必要だ。
民間企業は現状、30代以降に即戦力を求めている。この固定概念を変えるには、「当事者世代が、この日本式経営にイノベーションを起こすほどの潜在価値を有している」と証明できるか否かにかかっていると言って良いからだ。
実現のために政府による後押しは必須だが、持続可能な雇用を得るには、その後の努力は必須だろう。