
日本経済新聞は2019年7月15日、日系非グローバル企業の採用担当者のうち5割~6割以上が「空気を読む人材」を欲する傾向と報じました。
調査分析は早稲田大学・吉田文教授が実施したもの。吉田教授が、下記2種の人材のうち「どちらの人材を採用したいか?」というテーマを、外資系企業・日系非グローバル企業の採用担当者にそれぞれ当てはめたところ、
- 空気を読んで円満な人間関係を築くことのできる人材
- 論理的に相手を説得できる人材
日系非グローバル企業の採用担当者は52.7%~60.6%が「空気の読める人」を選択したが、外資系企業の採用担当者は30.4%~34.0%しか選択しなかったと明らかにしました。
「異質な存在を嫌う」日本企業
この調査分析は、日本企業の特徴を浮き彫りにするため、非グローバルの日系企業、日系グローバル企業、外資系企業の3種に分類して実施されたものです。
冒頭では日系非グローバルと外資系企業を比較したデータを記しましたが、グローバル企業の採用担当者にしても、技術系41,8%~事務系50.7%が「空気の読める人」を選択したと発表。
最近、日系企業の経営トップ層などは「多様な人材」や「新たな人材」などを叫ぶが、実態としての日本企業は、グローバル・非グローバルに関わりなく、論理的な説明能力を持つ人材より単に空気の読める人が好む旧体制質が強いと考えられます。
各企業の採用傾向
募集系統 | 「空気を読む人材を採用」に近い | 「論理的な人材を採用」に近い | |
日系非グローバル企業 | 事務系 | 60.6% | 39.4% |
技術系 | 62.7% | 47.3% | |
日系グローバル企業 | 事務系 | 50.7% | 49.3% |
技術系 | 41.8% | 58.2% | |
外資系企業 | 事務系 | 30.4% | 69.6% |
技術系 | 34.0% | 66.0% |
「空気読む能力」教えるのは難しい
今回の調査発表は新卒学生より、ひきこもり当事者やその家族にとってショックな報道と言えるでしょう。
「空気を読む能力」は、社会生活や人生経験に加えて、当人の性格的資質も影響する能力です。論理的思考力のように学術によって培われるものでなく、研修やカリキュラムなどの付け焼刃的な教育で身につくものでもありません。
さらに言えば、ひきこもり当事者さんの多くは、過去に不登校やパワハラなど社会生活に失敗を経験し、長期間社会から隔絶された生活を過ごしています。何十年と社会経験を積んできた同世代と比べて、相対的に「空気を読む能力」が低いものと考えられます。
政府は現在、就職氷河期支援プログラムを推し進めて人材活用を促す考えです。しかし、日本企業が根本的に求める能力を、当事者さんが身に着ける方法を考えださない限り、就労支援により一時的に職を回復しても、解決しないのではという懸念も出ています。
参考fa-angle-double-right日系企業「空気読む人材」優先続く 「学習」聞かず /日本経済新聞