くにおテーマ

「復職しても、良いことばかりじゃないですよ」

今回のアンケートに応じてくれた「くにおさん」は、現在の生活を振り返り、現状に対する不満をぶつける。彼はパワハラが原因で退職して4年間、引きこもり生活の道を選んだ人だ。

いまは妻に支えられ復職したが、「何度辞めようと思ったかわからない」という。妻も喜び、生活も安泰。いったい何が彼を悩ませるのか。

今回のインタビューは、復職後に苦しみを語る彼の姿を明かしていきたいと思う。

 

回答者 くにおさん

工場に作業員として勤務する40代の男性。

かつては製造業の背広組として、社を率いる大規模なプロジェクトを動かしていた優秀な人物。しかし、パワハラを機に引きこもってしまった彼は、作業員としての道を選択する。

現在の生活にはおおむね満足しているようだ。しかし彼は「復職しても、良いことばかりじゃない」と語っている。

(画像はイメージです)

 

パワハラに悩み退職へ

 

ゆめ
どうして、引きこもってしまいましたか?

 

以前勤めていた企業でのいじめが原因です。

私は製造業の管理社員として働いていましたが、ある日、私が立ち上げたプロジェクトが失敗して、会社に大損害を与えました。

当時の私は「自分はデキる」と思っていて、それを鼻にかけたりしていました。そのせいか、プロジェクトが失敗して以降、周囲の風向きが180度変わりました。

 

 

ゆめ
残念でしたね…。解雇されてしまったんですか?

 

まさか。解雇まではいきませんよ。

ですが、その日から段々、社内での扱いが変わりました。直属だった上司に嫌味を言われたり、雑用のような仕事ばかりを押し付けられるようになりました。

いままでは見過ごされていた、小さなミスまで粗探しするようになったりして、明らかに当たりがキツくなったのを覚えています。

それから、後輩の前で仕事のミスを責められたりするようにもなりました

私は自分でもプライドが高いと思っているので、後輩の前で露骨にダメ出しされるのは、精神的に一番つらかったです。今でも夢にみて、うなされるくらいですね。

 

 

ゆめ
他人前で公然とミスを指摘する行為は、現在ではパワハラですからね

 

それからの生活は、悲惨でした。

もともと、変化の少ない業界です。上司に憎まれるのは致命的で、私の落ちぶれようは社内でもすぐにウワサとなりました。

後輩たちからも侮辱され、時には聞こえるように陰口をたたかれました。彼らはかつての私の言動や振る舞いに不満があったようで、部下や後輩たちの表情は「いままでエラそうにしやがって!」といった感じでした。

彼らにしてみれば、復讐のつもりだったのかもしれません。

 

 

ゆめ
それは…どんな風に?

 

たとえば、私が部下に仕事を教えたことを、私の目の前で別の社員に「間違っていないか?」と確認するようになったりです。

プレゼンの時に、私が企画した案を露骨に「ダメな例」として挙げる後輩もいました。

他にも色々ありますが、あまり語りたくはありません。とにかく、完全に室内全員が私を敵としていた感じです。

結局、精神的に病み、仕事自体が嫌になり、妻の同意も得ずに仕事を辞めてしまいました

 

妻を働かせ自分は家に

 

「引きこもり生活は地獄だった。自分がダメになっていくのを痛感した」くにおさんは過去を振り返り、引きこもり生活の苦しさを口にする。

勝手な理由で仕事を辞め、理由も語らず、妻を苦しめ続ける日々。

落ちぶれた男にとって、自尊心は邪魔でしかないというのか。だらだらと生活するうちに、気付くと4年が経過していた。

 

ゆめ
引きこもり生活はどうでしたか?

 

引きこもりとして過ごす最初のころは辛かったです。

妻から「はやく再就職してほしい」とずっと言われ続けたからです。大黒柱の私が働かないと、家計がドンドン苦しくなる。当たり前の話ですよね。

 

 

ゆめ
周囲に相談などしましたか?

 

困り果てた妻が、勝手に私の実家に相談を持ち掛けました。妻と両親の3人を相手に、私が怒鳴ったりするだけの相談です。

まわりは「働け」と言いますが、当時の私は「これだけツライ思いをしているのに、どうして働けというんだ!」という気持ちです。

家庭内はもう、めちゃくちゃでした。「仕事を辞めたら離婚」なんて到底納得できませんが、まぁ、離婚されてもおかしくなかったと思います。

 

 

ゆめ
大変でしたね。その後、どうなりましたか?

 

妻が働きに出るという形で落ち着きました。

プライドの高い私は、妻にも会社での情けない経緯を話したくありませんでしたが、背を腹にかえることはできません。

思い切って仕事での失敗や心のダメージについて話すと、「それなら、わたしが働きに出る」と言ってくれたんです。しばらく休みたいという願いを、聞き入れてもらった形です。

 

結局、4年間も引きこもり続ける

 

妻の協力を得て無事復活。

これで物語を締めくくれるなら、どれだけ美しい話になるだろうか。

しかし、現実は甘くない。

妻の協力を得たハズのくにおさんは、甘え、堕落した生活を続けてしまう。

 

 

奥様の協力が得られてよかったですね。お休みの期間はどれくらいになりましたか。

 

それが…実は4年も引きこもってしまいました。

最初は「妻は私の心の支えだ。気持ちをムダにはできない」と考えていましたが、途中からつい甘えてしまって…家でテレビとネットを続ける生活を過ごしてしまいました。

 

 

ゆめ
それでも…家事などはお手伝いされたんですよね?

 

いいえ‥。実は食事も洗濯も掃除も仕事も、すべて妻に任せきりにしてしまいました。

今考えると、あり得ない話ですが、当時は一種の精神病状態です。なにもやる気がなくなって、気付くと夫らしいところは、何一つ見せなくなってしまいました。

いわゆる大きな子供状態です。。

 

 

ゆめ
逆に、そこからどうやって抜けだしたのか。気になります。

 

妻の涙を見て、「苦しい」と感じたからです。

ある日、妻が仕事から帰ってくるなり、泣き出したんです。「大きな失敗をして、上司に怒られてしまった」と。

自堕落な生活に甘んじていた私ですが、この時は人生で一番大きな衝撃を受けた思いです。なにせ、かつてのわたしと同じ思いを、最愛の妻にさせてしまったのですから。

思わず私も、もらい泣きです。そして「このままじゃいけない」と、ハッキリ意識するようになりました。

 

苦しみながらも復帰の道を選ぶ

 

社会復帰を決意したくにおさんは、立ち上がった。

向かう先は、ネット求人に載っていた工場。彼は、その手に握っていたプライドを捨て、苦しみが待つ日々を選んだと語っていた。

 

 

ゆめ
どうして工場を選びましたか?

 

前も製造業だったので、「多少勝手を知っている」からです。

もっとも、前は背広を着ていましたが、今回は現場の作業員です。黙々と仕事をしていれば良いと考えて、「こっちの方が楽そうだ」と考えていたのは否めません。

この手の仕事は面接が厳しくないことも知っていたので、採用は比較的スムーズでした。

 

 

ゆめ
良かったですね。奥さんも喜びました?

 

それはもう。すごく喜んでくれました。

お互い苦難を乗り越えたので、以前より親しく、仲良くもなりました。例えば、私は失敗や悩みを妻に語るようになり、妻も以前より的確に私の気持ちを汲んでくれるようになったと感じています。

これはお互いが苦労をして、仕事をして、悩んできたからこそ、できるようになったコトだと思っています。

 

 

ゆめ
そうですね。お仕事の方も順調でしたか?

 

最初のうちは順調でした。

わたしはもともと、どんな仕事も安定的にこなします。作業にもすぐに慣れて、同僚からも信頼されるようになりました。

 

 

ゆめ
問題なさそうに聞こえます。最初のうちは…というと?

 

ただ…、途中からわかったことですが、かつての後輩が管理職として転職していて、時折顔を合わせるのがツラいんです。

むこうは私を負け犬だと見ているのか、新しい職場では上司としての立場を利用して嫌がらせのようなことをしてきたり。わざと私が頭を下げないといけないような状況に持って行ったり。

とにかく、かつての部下。それも年下相手に頭を下げる日は苦痛です。わたしの頭の中には、彼の存在がいつもしこりとなって残っています。

顔を合わせるのがイヤでイヤで、彼の視界にうつらぬよう、工場でおびえるようにしている日々が、たまらなくミジメです…。

 

 

ゆめ
なるほど…。それはつらい現実ですね。

 

でも、妻や両親にこれだけ迷惑をかけてしまった身です。

いまさら「入社してすぐに転職する」とも言い出せません。いずれは転職するかもしれませんが当面はガマンの日々ですね。

最近は引きこもりが社会問題になっているそうですが、私からひと言いわせてもらうなら、「年がいってから復帰しても、尊敬だけは得られない」ってことです。

わたしのようにかつての部下ではないにせよ、たいていの職場では年下上司が存在します。そして、わたしのような引きこもりは年下相手にも、ガマンして頭を下げるしかない日々が待っています。

 

まとめ

 

かつての栄光から転落し、引きこもりになってしまった、くにおさん。

彼は妻の協力のかいあって、4年間のひきこもり生活に終止符を打つが、社会復帰後も幸せとは言い切れないと語っている。

どれほど強力な後押しがあっても、年齢相応の尊敬だけは、得られないと感じたからだ。

人は年齢を重ねるごとに、自尊心を積み上げる。「尊敬」に対する需要は、今後も高まる一方だろう。

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