なぜ、就職氷河期を支援する必要があるのか?【対話式で解説】

さいきん、就職氷河期世代を支援しようという動きが、相次いで登場しています。

しかし、そもそもの話として、

  • どうして、氷河期世代の支援が必要なのか?
  • 支援すると他の世代に良いことがあるのか?
  • ひきこもりがいると聞くが、ただの怠け者と何が違うのか?

と、ギモンに思っている方も多いでしょう。

そこで今回は、就職氷河期への支援が必要な理由をできるわけわかりやすくお伝えしたいと思い、オール対話形式でご説明します。

 

ゆめ
この記事は、スマートフォンの方が読みやすいかもです!

 

就職氷河期世代とは?

 

氷河期の範囲

 

若者
いろいろ聞く前に教えて欲しいんだが…そもそも、就職氷河期世代ってどんなひとたち?

ゆめ
就職氷河期っていうのは、1993~2004年の間に、学校を卒業したひとたちのことよ。学歴にもよるけど、だいたい30代半ば~40代半ばくらいかな。

若者
へぇ。でも、どうして氷河期って呼ばれるんだ?

ゆめ
彼らが就活生のころ、あらゆる雇用が大きく冷え込んでしまった(減少した)からよ。

ゆめ
当時の日本は、バブル崩壊による大不況を迎えていたの。だから、新人を受け入れる企業が減ってしまって、仕事に就けない人が続出したの

若者
そういえば、子供の頃テレビで聞いたような気がするな…。そのひとたちは、いまどうしているんだ?

ゆめ
もちろん、大半は働いているひとよ。でも推定100万人ほどは、不安定な働き方や引きこもり状態と言われているわ。

若者
えっ!そんなにたくさんいるの!? ひきこもりって学生や20代に多いイメージだったから、ちょっと驚いたわ。

 

就職氷河期とは?
バブル崩壊の影響から雇用難が続いた1993年~2004年の期間に、学校卒業期を迎えた人のこと。日本政府は支援対象を推定100万人と必要と見ている。

 

どうして、氷河期世代の支援が必要なのか?

 

若者
でもさ…どうして、氷河期世代の支援が必要なんだ?

ゆめ
理由は大きく分けて5つあるの。

 

就職氷河期世代への支援が必要な主な理由
  1. 自己責任とは言い切れないから
  2. 日本の雇用文化に社会復帰を阻まれるから
  3. 生活基盤の設計を求められる年代だから
  4. 将来世代の負担軽減につながるから
  5. 8050問題など事件事故の防止につながるから

 

理由1:氷河期世代は自己責任とは言えないから

 

 

ゆめ
1つ目の理由は、「氷河期世代は自己責任とは言えない」からよ。

若者
なぜ、そんなことが言える? 雇用が減ったっていっても、そんなに大きく減ったわけ?

ゆめ
当時を生きていないとわからないよね。まずは、これを見て欲しいの

 

氷河期

参考完全失業率・有効求人倍率/独立行政法人・労働政策研究・研修機構

 

ゆめ
これは独立行政法人・労働政策研究・研修機構が制作した、過去の日本の有効求人倍率と完全失業率を算出したデータよ。

若者
求人倍率とか失業率とか書いてあるけど、どんな意味だ?

ゆめ
求人倍率は「働きたいひと1人つき、どれくらい求人があるか」、完全失業率は「働く意欲はあるが、就職できていないひと」を意味しているの。これを見れば、当時がどれほど悲惨だったか、想像がつくはずよ。

若者
こりゃ確かにひどいな…。求人倍率はいまの3分の1以下。失業者数もぜんぜん違うじゃねーか。

ゆめ
そうね。それに…当時のひとは見た目よりもずっと、不本意な人生を歩んだと考えられるわ。

若者
どうして?

ゆめ
当時は求人の数だけでなく、選択肢そのものが減ってしまった時代なの。たとえば、一般的な感覚としては、大学を出て派遣で働きたくないわよね。

若者
当然そうだな。俺も親から正社員になれって言われてる

ゆめ
でも、当時は先行きが不安な企業が多くて、正社員自体が大きく減ったの。だから「就職できないひと」だけじゃなくって、「就職できたけど、不本意な働き方でガマンしているひと」も、相当多いと見られているの。

若者
なるほど、それで100万人なわけか…

ゆめ
こういう時代に生まれたひとを、「運が悪かった諦めろ」で済ませてしまうのは、すこしかわいそうだと思わない?

若者
思う。俺が当事者だったら「生まれた時代が悪かったから諦めろ」と言われても、ちょっと納得できないな。

ゆめ
時代の影響なんだから、自己責任とも言えないしね。だから、支援計画は不公平でもなんでもないし、必要なのよ。

 

 

理由2:日本の雇用文化に社会復帰を阻まれるから

 

若者
でもよ。いまはもう雇用は落ちついたわけでしょ。だから氷河期世代のひとも、いまからでも就職すればいいんじゃないの。

ゆめ
ところが、なかなかそうもいかないのよ。

若者
どうして?

ゆめ
知っていると思うけど、日本は新卒一括採用みたいに、「若くないといい会社には入社できません」って文化があるの。

若者
そうだね。就活シーズンになると、毎年ニュースでやってるな。

ゆめ
でも、氷河期世代のひとたちって30代~40代よ。若さも経験もないから、いまさら新卒向けの求人するのはムリがあるわ。

若者
じゃあ、30代向けのキャリア採用とか無理なの?

ゆめ
それができるなら苦労しないわ。でも、そういう求人は「マネジメント経験のあるひとや、実力はあるが上の停滞に悩んでいるひと」みたいに、ある程度経験がある人材を求めているの。

若者
じゃあ…外資系とか? 年齢を問わないって聞いたことがあるぞ

ゆめ
外資系が欲しいのは即戦力よ。それに外資系も日本法人の場合、年齢はしっかり問われるわ。たとえば、40代はマネジメント経験者・専門職以外の需要はないわ。

若者
なるほどね。氷河期世代のひとは30代半ば~40代半ばだけど、企業が求める経験を積んでいないから、支援が必要ってことだね。

 

理由3:生活基盤の設計を求められる年代だから

 

 

若者
ん?でもさ、外国人やら研修生やらを招き入れてる業界なら、キャリアとか関係ないんじゃない?

 

ゆめ
確かに、飲食店やコンビニのアルバイトなら、経験はあまり求めないわ。

 

若者
でしょ。だから氷河期の人たちは、みんなそこで働けばいいじゃない。

 

ゆめ
でも、それじゃ根本的な解決にはならないの

 

若者
どうして?

 

ゆめ
だって、飲食店やコンビニのアルバイトをしている人たちは、多くが学生さんや出稼ぎ・あるいは家計の補助をしている主婦(主夫)の人たちよ。

 

若者
そうだね。

 

ゆめ
でも、氷河期世代で苦しんでいるひとたちの多くは、協力し合うパートナーや帰るべき国のあるひとではないの。(一般的な意見としては)既に安定的な生活基盤を持っているべき世代よ。

 

若者
そっか。不安定な収入だと、結婚とか自立とか、難しいってことだな。

 

ゆめ
うん。だから、氷河期世代のひとたちにアルバイトや、アルバイトと変わらない待遇の求人を紹介しても、解決しないの。

 

若者
たしかに…僕もアルバイトで一生過ごしたいとは思わないな。

 

ゆめ
それに、年齢的にも余裕がないの。だって、あと5年もしたら50代になっちゃうひともいるのよ。若い人みたいに、アルバイトや下積みしてから正社員、なんて悠長なこともしてられないわ。

 

若者
うーん。だから支援が必要って話なんだね。でも、どんな仕事を提供したら解決するんだ?

 

ゆめ
求められている仕事は、「低スキル・低経験&40代以上でも働けて、なおかつ安定的な条件の仕事」よ

 

若者
でも…そんな都合のいい条件、なかなかないような…

 

ゆめ
そうね。だから日本政府は最近、氷河期をなんとかしようって動いているのよ。3年間で30万人の正規雇用を目指すと訴えてるわ。

 

若者
すごい! でも、政府のそういう計画って、だいたいコケるイメージしかないけどね。

 

ゆめ
わたしは一つの解決策として、国や自治体が率先して救済を進めるべきだと思っているわ。

 

若者
というと?

 

ゆめ
政府は民間に30万人の雇用を~と言いつつ、自身ではほとんど採用しようとしていないわ。だから、氷河期世代に求められる求人例として、支援策の本気度を示す例として、率先して求人を出して欲しいと考えているわ。

 

若者
まてよ。公務員試験なら集まるって言えるわけ?

 

ゆめ
実際、宝塚市で実施された氷河期世代の公務員採用試験では、たった3人の募集に1816人が応募したわ。

 

若者
3人の枠に1816人だと…。すごい世界だな。

 

ゆめ
これはつまり、いかに多くのひとが現状に苦しんでいるのかという証拠よ。そして、国や社会がニーズを満たす仕事を提供できれば、彼らは喜んで就職するってことを意味しているの。

若者
現状、解決が進まない根本的な理由の1つは、出ている求人に魅力がないってことか…

 

理由4:将来世代の負担減に繋がるから

 

 

若者
まぁ。氷河期が大変なんだねってことはわかったよ。でもさ、僕らみたいに関係ない世代の人にしてみれば、何の義理があって支援するんだって話だよ。

 

若者
しかも、対象者は30代や40代の中年たちでしょ…。年齢・性別でいえば、どう見ても弱者じゃない。支援と言われても…どうも意欲がわかないなぁ。

 

ゆめ
でも、氷河期世代を支援すると、他の世代にもメリットはあるわよ。

 

若者
ほんとかよー。どんなメリットがあるんだ?

 

ゆめ
まず、将来的な税金や保険の費用負担の増加が、緩やかになるわ。

 

若者
よくわかんねーな。どうして中年支援が将来の負担減に繋がってくる?

 

ゆめ
氷河期世代の人のなかのなかには、ほとんど仕事をしていないひとも多いの。

 

若者
ニートやひきこもりのことか。

 

ゆめ
彼らが自立できないまま高齢者になってしまうと、社会保障の負担は増えてしまうわ。でも、逆に仕事をして税金を納めるようになってくれれば、それだけ国の財政は軽くなるの。

 

若者
なるほど。

 

ゆめ
他にも、経済的に自立したひとのなかには、結婚を考えるひとも出てくるはずよ。婚姻率は出生率と密接な関係にあるだけでなく、経済の循環にも貢献するわ。つまり、彼らの社会進出は、日本の将来にも良い影響を与える可能性があるの。

 

若者
言われてみると、いろいろなメリットがありそうだな。

 

ゆめ
それともう1つ。これはわたし個人の意見だけれど、「氷河期世代を支援したという実績」は、将来同じような危機が起きた時に、大きな力となるはずよ。

 

若者
どういうこと?

ゆめ
資本主義社会は原則、競争ありきの世の中よ。でも同時に、個人の力ではどうにもできない自体が生じたときは、スムーズな協力も必要なの。

若者
なるほどな。結果はどうあれ、また同じような事態が生じた時の役に立つってわけか。

 

 

理由5:8050問題など事件事故の原因となるから

 

 

ゆめ
最後は、氷河期世代を放置した末路について解説するわ。

若者
放置すると、まずいコトでも起きるのか…?

ゆめ
現時点で言えるのは、「8050問題」の悪化ね。

若者
8050問題って?

 

ゆめ
自立できない50代の子世代を80代の親世代が支える構図よ。両者の年代を取って8050問題って言われているの。

 

若者
それの、なにが問題なの?

 

ゆめ
親が倒れてしまったときを考えてみて。8050の子どもは、50代無職・ひきこもり状態のまま育ってきたひとたちよ。

 

若者
残された子どもは生活できないってことか… でも、そんな事件ホントに起きるの?

 

ゆめ

たとえば、

職場トラブルが原因でひきこもった娘が母と共に凍死した札幌市母子凍死事件
アイドルのコンサート以外は外にでない息子が、死亡した父親の年金を受け取り続けていた不正受給事件

みたいな事例は、いくつも出ているわ。

 

若者
はじめて知ったよ。ちょっと、想像もつかない事件ばかりだ…。

 

ゆめ
支援対象100万ともいわれる氷河期世代は、いま30代~40代よ。このままあと10年も経過すると、どういうことになるかわかるでしょ。

 

若者
こういう事件が増えてしまうってことだね。

 

ゆめ
そう。だから支援を理解して欲しいと思っているの。

 

ゆめ
全員を救って欲しいとまでは言わないけれど、やる気のある人に対して機会を与えるくらいの支援は、ぜったいに必要よ

 

 

 

まとめ

就職氷河期世代とは1993年~2004年に学校卒業期を迎えたひとです。

彼らのうち推定100万人は不本意な働き方やひきこもり状態に悩んでいますが、それは単なる自己の責任にとどまらない、時代の影響があったからです。

また、日本の雇用文化は新卒一括採用などにより流動性が低く、若い頃に氷河期を迎えた世代にとって、理不尽かつ過酷すぎます。景気が安定を見せて来た昨今、彼らへ多少支援を差し伸べたところで、他の世代に対して不公平とは言えないでしょう。

「どうして、氷河期に支援が必要か?」とお考えになっている方につきましては、どうかご理解をいただければ幸いです。

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